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松山市内で路面電車と同じ道を走るときの決まり

道後温泉や松山城へ向かう道には、伊予鉄道の市内電車の線路と並んで走る区間があります。線路の上の通行、電停で電車が止まっているとき、右折、信号について、道路交通法と警察庁の教則の原文で確かめました。

この記事のまとめ

  • 車は、右左折や横断などで線路を横切る場合や、危険防止のためやむを得ない場合などを除き、軌道敷内を通行できない。
  • 乗り降りで止まっている電車には追いついたら後ろで止まり、安全地帯があれば徐行できる。
  • 線路をまたいで右折するときは、右後方から来る路面電車も確認するよう伊予鉄が呼びかけている。
  • 軌道敷内に停車することと、電車の運行時間中に電停の標示柱から10m以内に止めることは禁じられている。
  • 「軌道敷内通行可」の標識がある松山市内の区間は、公式の資料で確かめられなかった。

市内電車の線路は、道後温泉や松山城の近くまで通っている

伊予鉄道の路線図のページには、市内電車として次の系統が載っています。

系統 ページに書かれている区間
環状線 1は松山市駅からJR松山駅前を回り、2は松山市駅から大街道を回る
松山市駅線 3は松山市駅と道後温泉駅の間
JR松山駅前線 5は道後温泉駅とJR松山駅前の間
本町線 6は松山市駅と本町六丁目の間
坊っちゃん列車 松山市駅・JR松山駅と道後温泉駅の間

路線図のページに道後温泉駅や大街道の名前が出ているとおり、市内電車は道後温泉や松山城の近くを通っています。この辺りへ向かう車は、電車の線路と同じ道を走ることがあります。路面電車のない地域では身についていない決まりが、いくつかあります。

この記事では、道路交通法の条文と、警察庁の「交通の方法に関する教則」の原文を引いて、場面ごとに決まりを並べます。条文にある「路面電車」は、道路交通法で次のように定められています。

路面電車 レールにより運転する車をいう。

線路の上(軌道敷内)は、原則として走れない

道路交通法の第21条は、「軌道敷内の通行」を定めています。第1項は次のとおりです。

車両(トロリーバスを除く。以下この条及び次条第一項において同じ。)は、左折し、右折し、横断し、若しくは転回するため軌道敷を横切る場合又は危険防止のためやむを得ない場合を除き、軌道敷内を通行してはならない。

警察庁の教則にも、同じ趣旨が書かれています(第5章 第2節)。

(5) 軌道敷内を通行してはいけません。しかし、「軌道敷内通行可」の標識(付表3(1)52)によつて認められた車が通行する場合や右折する場合などは別です。

つまり、右左折・横断・転回のために線路を横切ることは認められていて、線路に沿って走ることは、危険防止のためやむを得ない場合と、次の3つの場合を除いて認められていません。

線路の上を走れる3つの場合

第21条の第2項は、軌道敷内を通行できる場合を3つ挙げています。

車両は、次の各号に掲げる場合においては、前項の規定にかかわらず、軌道敷内を通行することができる。この場合において、車両は、路面電車の通行を妨げてはならない。

一 当該道路の左側部分から軌道敷を除いた部分の幅員が当該車両の通行のため十分なものでないとき。 二 当該車両が、道路の損壊、道路工事その他の障害のため当該道路の左側部分から軌道敷を除いた部分を通行することができないとき。 三 道路標識等により軌道敷内を通行することができることとされている自動車が通行するとき。

どの場合も、「路面電車の通行を妨げてはならない」という条件が付いています。

第3号の「道路標識等」にあたるのが、教則の付表に載っている「軌道敷内通行可」の標識(番号52)で、表示する意味は次のとおり書かれています。

自動車が軌道敷内を通行できること

表示する意味に「自動車が」とあるとおり、対象は自動車です。標識が出ていない道路でも、第2項の第1号・第2号の場合を除き、第1項の原則が当てはまります。

松山市内で標識のある区間は、確かめられなかった

愛媛県警察が公開している「愛媛県道路交通規則」には、「軌道敷内通行可の規制」という名前が、交通規制の一種として出てきます。ただし、松山市内のどの区間が該当するかを示す表は、このページにはありませんでした。伊予鉄道のページからも、区間は読み取れませんでした。

走るときは、道路の上に出ている標識で判断します。標識が見当たらない道では、右左折や横断で横切る場合などを除き、線路の上を通行しないのが条文の原則です。

後ろから電車が近づいてきたとき

線路の上を通行できる場合でも、後ろから電車が来たときの決まりがあります。第21条の第3項です。

軌道敷内を通行する車両は、後方から路面電車が接近してきたときは、当該路面電車の正常な運行に支障を及ぼさないように、すみやかに軌道敷外に出るか、又は当該路面電車から必要な距離を保つようにしなければならない。

教則の第5章 第2節の(6)にも、同じ内容があります。

電停で電車が止まっているとき

電車の後ろで止まる

乗り降りのために止まっている電車に追いついたときの決まりは、第31条にあります。

車両は、乗客の乗降のため停車中の路面電車に追いついたときは、当該路面電車の乗客が乗降を終わり、又は当該路面電車から降りた者で当該車両の前方において当該路面電車の左側を横断し、若しくは横断しようとしているものがいなくなるまで、当該路面電車の後方で停止しなければならない。ただし、路面電車に乗降する者の安全を図るため設けられた安全地帯があるとき、又は当該路面電車に乗降する者がいない場合において当該路面電車の左側に当該路面電車から一・五メートル以上の間隔を保つことができるときは、徐行して当該路面電車の左側を通過することができる。

教則の第5章 第3節にも、同じ趣旨が書かれています。

(3) 停留所で止まつている路面電車の後方では停止し、乗り降りする人や道路を横断する人がいなくなるまで待たなければなりません。しかし、乗り降りする人がいないときで路面電車との間に1.5メートル以上あるときや安全地帯があるときは、徐行して進むことができます。

条文が挙げている徐行できる場合は、2つあります。

  • 安全地帯があるとき
  • 乗り降りする人がいない場合で、電車の左側に1.5メートル以上の間隔を保てるとき

「安全地帯」は、道路交通法の第2条で次のように定義されています。

安全地帯 路面電車に乗降する者若しくは横断している歩行者の安全を図るため道路に設けられた島状の施設又は道路標識及び道路標示により安全地帯であることが示されている道路の部分をいう。

電停ごとに安全地帯があるかどうかは、今回の調べでは確かめていません。

電車の横を通るとき、安全地帯の中

第17条の第6項は、車が安全地帯に入ることを禁じています。

車両は、安全地帯又は道路標識等により車両の通行の用に供しない部分であることが表示されているその他の道路の部分に入つてはならない。

教則の第5章 第3節には、安全地帯のそばを通るときの決まりもあります。

(2) 歩行者がいる安全地帯のそばを通るときは、徐行しなければなりません。

電車を追い越すときは左側

第28条の第3項は、路面電車を追い越すときの通る側を決めています。

車両は、路面電車を追い越そうとするときは、当該車両が追いついた路面電車の左側を通行しなければならない。ただし、軌道が道路の左側端に寄つて設けられているときは、この限りでない。

電停のそばに車を止めてはいけない場所

第44条の第1項は、停車も駐車も禁じる場所を挙げています。路面電車に関わるのは次の箇所です。

一 交差点、横断歩道、自転車横断帯、踏切、軌道敷内、坂の頂上付近、勾配の急な坂又はトンネル

四 安全地帯が設けられている道路の当該安全地帯の左側の部分及び当該部分の前後の側端からそれぞれ前後に十メートル以内の部分

五 乗合自動車の停留所又はトロリーバス若しくは路面電車の停留場を表示する標示柱又は標示板が設けられている位置から十メートル以内の部分(当該停留所又は停留場に係る運行系統に属する乗合自動車、トロリーバス又は路面電車の運行時間中に限る。)

この項の冒頭には、「法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合のほか」という例外が書かれています。教則では、同じ場所について「赤信号や危険防止のために一時停止する場合などは別です。」と説明しています。

条文によると、電停の標示柱や標示板から10メートル以内は、電車の運行時間中に限って、停車も駐車もできません。

右折するとき

条文が定める右折の方法

自動車の右折の方法は、第34条の第2項です。

自動車、一般原動機付自転車又はトロリーバスは、右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の中央に寄り、かつ、交差点の中心の直近の内側(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分)を徐行しなければならない。

右折のために線路を横切ることは、第21条の第1項が認めています。右折する車が、交差点を直進・左折する路面電車の進行を妨げてはならないことは、道路交通法の第37条に書かれています。

車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。

教則の第5章 第7節は、交差点で直進や左折をする電車との関係を、次のように書いています。

(5) 右折しようとする場合に、その交差点で直進か左折をする車や路面電車があるときは、自分の車が先に交差点に入つていても、その進行を妨げてはいけません。

伊予鉄道が呼びかけている、右後方の確認

伊予鉄道の公式ブログ「松山市内は、右後方にご注意を!」(2023年9月8日)は、松山市内で右折する車に向けて、次のように書いています。

答えは、右前方の対向車に加えて、右後方から路面電車が来ていないか目視やサイドミラーなどで確認する必要があります。交通法規上は、直進する路面電車が優先です。右折する側がしっかりと確認する義務があります。

旅行で来た人については、こう書かれています。

しかしながら、旅行などで松山に来られた方は、右折の際に右後方を確認する習慣がありません。

電車側の事情も書かれています。

とはいえ、電車は急には止まれませんし、ハンドル操作で左右に避けることもできません。

そのうえで、お願いとして次の文があります。

ですから、旅行などで松山に来られる際には、特有の交通事情を理解いただき、路面電車の線路を跨ぐ右折の際には、右後方も確認してから右折するようお願いします。

右折する車の右後方から電車が来る場面があることは、伊予鉄道がこのブログで書いていることです。この記事では、どの交差点でそうなるかは確かめていません。

右折を待つ位置と、軌道敷内の停車

第44条は、軌道敷内での停車を禁じています(前の節に引用)。右折待ちの車が軌道敷にかかって止まる場合に、この規定がどう当てはまるかを説明した警察・国の資料は、今回は見つけられませんでした。右折待ちの位置については、前の節の条文を並べるにとどめます。

信号の矢印は、電車だけが進める場合がある

教則の付表1(信号の種類と意味)には、路面電車と車で扱いが分かれる信号が載っています。

路面電車は、黄色の灯火や赤色の灯火の信号であつても矢印の方向に進むことができますが、歩行者及び遠隔操作型小型車や車は、進んではいけません。

これは「黄色の灯火の矢印」の項の説明です。黄色の矢印の信号に従って進めるのは路面電車で、車は進めません。松山市内のどの交差点にこうした信号があるかは、今回の調べでは確かめていません。

同じ付表には、右折の途中で信号が赤に変わったときの説明もあります。

交差点で既に右折している車や路面電車は、右折方向の信号が赤でもそのまま進むことができます。この場合、その車や路面電車は、青色の灯火に従つて進んで来る車や路面電車の進行を妨げてはいけません。

確かめられなかったこと

  • 松山市内で「軌道敷内通行可」の標識が出ている区間
  • 松山市内の軌道が、道路の中央と側端のどちらにある区間が多いか
  • 道後温泉・松山城の近くの電停に、安全地帯があるかどうか
  • 右折待ちで軌道敷にかかって止まる場合の、第44条の扱い
  • 松山市内で転回(Uターン)が禁じられている区間
  • 罰則と反則金(条文は取得したが、この記事では扱っていない)

この記事について

条文は、e-Gov 法令検索の法令データを2026年10月13日に取得して読みました。教則は、警察庁のPDF(2024年11月施行の改正まで)を同じ日に読みました。伊予鉄道のページも同じ日に確かめています。法令や標識は改正されることがあります。実際に走るときは、現地の標識と信号、警察官の指示に従ってください。

出典

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